ごあんない
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電波男
恋愛資本主義から脱却し、萌えることによって心の平穏を得ようとする本だ。著者は、どうせ現実世界が幻想ならば脳内で暮らそうと主張している。それによって世界は平和になる。 電車男のムーブメントは搾取のためのプロパガンダだと断言する痛烈なアジテーション。 想像力が世界を救う。そんな本。 くだけた文体(残念!とかな)も恋愛資本主義にとらわれている層をオルグするための選択と思われ、その試みの成否は非おたくの書評を待てばわかるだろう。 恋愛について強調してあるのも、そういう切り口がわかりやすいからであって、本質的には恋愛なんてどうでもよく、愛についての本である。 (P231-232より引用)ルサンチマンの装飾を取り外すと、すごいことを言っている。肉体の価値を否定している。 肉体の快楽のために発生している金銭のやりとりが人権をないがしろにするなら、肉体への執着から決別すればよいと言っているにほかならない。 便宜上、肉体的な性別が出てくる文章だけれども、普遍的に通用する考え方だ。 恋愛資本主義の仕組みから逸脱することで愛の不在のために発生する悪循環を断ち切ろうとする考え。 もちろん全員がそうすると人類は滅びてしまうわけなんで、実際のところは、恋愛資本主義システムからの落ちこぼれ(←実は勝ち組)を救済するためのものであろうと思う。別に人類なんか滅びたってかまわないけどな。ちなみに第4章ではおたくの結婚について触れており、たけくまメモには著者本人から小説の形でその点を追求したいとのコメントがあった。 で、こういう解説めいたことを言っていちゃあ全然ダメで、実際に脳内で萌えなきゃ革命は始まらんのですよ>俺。 この本が優れていると感じたこと、思ったこと、気になったところを以下に箇条書きにする。 ●革命の書かもしれない インビジブルであるキモメン界(P069の図を参照)へ、ビジブルの有象無象を引き込むことによって、マスメディアによる恋愛支配を終焉させることが可能だからだ(P355)。 あるいは、そうなりつつある社会を看破した、現代を解説する本かもしれない。 ウェブ上でよく見られる言説の集大成的なところはあるのだが(ひょっとしたら私が目にしたそれらの源流がこの著者によるものだったのかもしれないが)、それでもこれが出版物となって書店で平積みされているというのはよく考えたら恐ろしいことだ。 ウェブ上のコンテンツが出版されることに、メリットがあると感じた。整理したりまとめたりする編集作業を経て、電気がない場所でも読める書籍の形にしてくれるのは、便利でもあるし、衆目を集めることにもつながるから。 本書のような主張に初めて出会った読者にとっては、予言書になりうる。 ●「あかほりシステム」について P073とP103にある「あかほりシステム」の図、これを旧来のおたくコンテンツのビッグタイトルにあてはめると、あかほり先生は搾取の側にもあてはめられるんじゃないかと思った。それゆえに「あかほりシステム」って名づけたのではないかと。 おたくコンテンツ内の産業構造に限っても変遷があると本書第2章と第4章で指摘されていることから、著者はわかってて書けなかったんだと思います。 ●わが敬愛する窪塚の名前が出てくる アイキャンフライ。 ●銭が女を商品にしている 女は男に所有されるみたいな構図、80年代フェミニストが憎む構造を、恋愛資本主義が補強している(P154の図を参照)。 男がおたく化することによって、女は商品どころか無価値になる。だから女はおたくを憎む(P108)。 支配と被支配は男女間で入れ替えが可能(P193)。 著者がフェミニストであることがわかる。 ●人が信じるものが変わっていく 要するに商品が生身の人間から創作にシフトしただけじゃないか、というとそうでもない。構造が変わってる。 ツリー構造の永続的なものから、相互につながる、中心不在の流動的なクラスタへ(P174)。 ●結婚 著者が、こんな本を出版してしまったからもう結婚なんかできない(何ページかわすれちゃった)と言っているのは、女どもを槍玉に挙げているからではないし、敵視しているからでもない。 自らが旗印となって恋愛資本主義を打倒し、萌えに殉ずる覚悟をもって結婚しないと言い切っているに違いない。 著者がこのあとすぐ結婚したり実は既婚者だったりしても見損なったりしない。 ●関連すると思われるもの 銀杏BOYZの「メス豚」「援助交際」「あの娘は綾波レイが好き」などの曲をリピートしながら読んだ。 読み終わったら今度は羽生生を読みたくなった(『ワガランナァー』の一人旅の台詞で「肉の女などイデアの叩き台に過ぎぬ」みたいなのがある)。もちろんジョージ秋山も。 この人たちはモテると思うけどね。 ●この本を読んでみたらいいんじゃないかと思う人 資本家。 労働者。 経済システムに組み込まれている人。 ●D.T. みうらじゅんなどの童貞を評価する動き、感傷と暴力性が同居する最近のパンクは、時代に要請されて出現したものではなかろうか。 恋愛資本主義のメインストリームに対するカウンターカルチャーではないか。 電波男まとめwiki - FrontPage 自分語りしたくなるんだねみんな。すごいな。 電波男を読んでなぜ皆は自分の立場を語りたがるか とか 召集令状 とか おたくの結婚 につづく
by exitemegane
| 2005-04-01 08:43
| レビュー
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